次世代エネルギーについて第1回は水素エネルギーを取り上げました。第2回となる今回は、「アンモニア」のエネルギー利用について紹介します。「アンモニア」と「エネルギー」という言葉がなかなか結び付かない方も多いかと思いますが、知れば納得!アンモニアに秘められた可能性に驚くこと間違いなし!です。
何かと話題の次世代エネルギーについて学ぼう!②アンモニアのエネルギー利用
- 電気
そもそも、アンモニアとは
アンモニアの分子式はNH3。窒素(N)と水素(H)から成る物質です。常温常圧では無色透明の気体で、農業用肥料や化学製品(メラミン樹脂やナイロン)の原料として利用されています。肥料としての用途が主で、世界で生産されるアンモニアのうち8割は肥料製造に利用されます。植物の生育に欠かすことのできない窒素を吸収しやすいかたちで含んでいるアンモニアは、産業革命以降、急増する世界人口を支える農業に広く貢献しました。肥料としてのアンモニアが普及していく過程で、アンモニアを効率的に製造するための研究が進められ、20世紀初頭には現在もなお使われている「ハーバー・ボッシュ法」という製造方法(鉄などを触媒とし、窒素と水素を合成してアンモニアを生成する方法)が確立されました。
このように、アンモニアは農業用・工業用としてすでに広く世界中で利用されている物質であり、年間で約2億トンが生産されています。
アンモニア自体がエネルギーになる
アンモニアはそれ自体を燃料として発電することができます。既存の火力発電所で、CO2を排出する化石燃料の代わりにアンモニアを燃やし発電する、という手法です。2021年現在、アンモニアを20%含ませた燃料で発電する「混焼」の実証実験が進められており、実現に向けた準備が進んでいます。アンモニアは燃焼させてもCO2を排出しません。そのため、混焼率が上がれば上がるほどCO2排出量を減らすことができます。国内のすべての石炭火力発電所が100%アンモニアの「専焼」で発電を行った場合、約2億トンのCO2排出削減になるという試算もありますが、これは日本のCO2排出量の6分の1にあたります。実現できればカーボンニュートラルへの取り組みが加速しそうですね。
ただ、アンモニアを燃料活用するには課題もあります。まず今後需要が高まった場合の価格高騰。農業用肥料とは別途、安定供給のための生産体制の拡充が必要です。その他にも、燃焼効率の向上や悪臭対策、燃焼時に発生する窒素酸化物(NOx)の削減などハードルはさまざまですが、今後の技術開発に期待です。
水素を運ぶ「キャリア」になる
世界中で使われているということは、すでに物流インフラが整備されているということ。実はアンモニアの物流インフラは、前回紹介した「水素」をエネルギーとして普及させるうえでも重要な役割を果たすと期待されているのです。目下、次世代エネルギーの大本命と目されている水素の難点は、取り扱いの難しさに起因するコストの高さです。気密性によっては爆発の危険性がある上に、液化させるには-253℃の超低温にしなければならないため、水素を単体で製造、輸送、保管するには、まったく新しいインフラの整備が必要となります。
この点において、アンモニアの供給網が活用できる見込みです。エネルギー利用を目的として製造された水素を、前述したハーバー・ボッシュ法などの製造方法によりアンモニアに変換して輸送・保管するのです。アンモニアは常温でも8.5気圧(自転車の空気圧程度)で液化するため、比較的容易に輸送ができるので、消費地まで輸送してから水素に戻して利用します。水素に戻す部分については研究中ですが、この手法が確立されれば水素エネルギーの普及は一気に広がるでしょう。
まとめ
CO2フリーの物質を活用した次世代エネルギーの将来像は、現在進行形で着々と描かれています。現在は天然ガスや化石燃料から製造されているアンモニアですが、今後は再生可能エネルギーによる水電解を利用した「グリーンアンモニア」や、製造過程で生じた二酸化炭素を放出前に回収する「ブルーアンモニア」の製造技術を確立させることにより、安定供給の確保を目指しています。水素と並んで注目されるアンモニアの今後について、続報が待たれます!
第3回では「洋上風力」を取り上げます。お楽しみに!(11月頃の更新予定です。)